トーナメント

二回戦 第二試合 

        藤松 千代 対   田原坂 敦子  


二回戦も第二試合に入ろうとしている。だが・・・・。


 
勝敗予想どころではなかった。それは両者の体格差を見れば明らかだ。20センチの
身長差がある。しかも一回戦を見る限り田原坂敦子は相撲経験が全く無さそうだった。
 むしろ、どうすれば敦子が藤松千代に勝てるのか?そんな空気が その場を支配している。

敦子は俄然やる気になっていた。 大方の予想を覆してやろう、そんな気でいる。
そこへ、一回戦の対戦相手、野々村魔子がやってきた。
「よう♪」
気安く声をかける魔子。それを敦子は無視した。

「何だよ、シカトすんなや。せっかく秘策を伝授してやろうと思って来たのによ」

「要らないわよ、アンタの助けなんか。」

「反則の事根に持ってんのか?でもお前勝ったんだからそれでいいじゃねえの。」

「そういう問題じゃありませんから」

確かにその事はどうでもよかった。というか、相撲の勝ち負けにもこだわっていない。
敦子にとっての大問題は自分のブチ切れた顔をファンに見せてしまったことだ。
そのファンの子がこの野々村魔子に流れていってしまったこともムカつく。
ただ・・・・。メイクを洗い流した野々村魔子は確かに可愛いかった。

「・・・・秘策って何よ?」
敦子が聞いた。圧倒的に不利なのは間違いないのだから聞くだけ聞いておこう。

魔子が敦子に耳打ちする。
「・・・・・・馬鹿?アンタ。」 思わず敦子が聞き返す。
「どうせお前に勝ち目なんか無いんだし試してみなよ。なりふりかまわず、」
「・・・アンタ、もしこれ失敗したら責任取りなさいよね。」

「田原坂敦子さん、藤松千代さん。土俵に上がって下さい。」

土俵に上がる両者。敦子は藤松千代を間近で見て、あらためて自分では相手に
ならないだろうことを思い知った。正攻法でいっても普通に負ける・・・。



「はっけよい、のこった!」

始まるや否や、敦子は思いっきり振りかぶり、千代の顔面に手袋を投げつけた。
手袋は命中し、千代は顔を抑えた。敦子はその機を逃さず猛ダッシュして思いっきり
千代にぶつかっていった。ここの土俵は通常より、かなり滑りやすくなっている。
上手くいけば足を滑らせ、そのまま土俵の外に持っていける、そのはずだった。




とんでもない。千代の体はビクともしなかった。 

「手袋なげちゃ駄目だ手袋!やり直し!」

至極、常識的な注意が審判から敦子にされた。二人とも、仕切り直す。
だが、不思議なことに敦子に元通り手袋だけは付けさせる審判であった。

「はっけよいのこった!」



千代は猛然とダッシュして敦子に襲い掛かる。ビビる敦子。
ぶちかまし一発で敦子の体は吹っ飛び、尻餅をついてしまった。藤松千代の勝ちだ。


 

inserted by FC2 system