トーナメント

一回戦 第一試合 その2

  安堂猪子 対     アリシア

 
 

芝城祢々子は安堂猪子の強さを良く知っていた。


この大会の昨年の決勝戦で芝城祢々子は安堂猪子と戦っている。
その時も紙一重の差で何とか勝利をおさめることが出来た。
あの一点張りの押しには誰もかなわない。止められない、自分以外に。
そう思ってる。昨年同様、決勝は安堂と自分が土俵に上がるはずだ。

芝城はアリシアのことを全く知らない。ああ、外人さんだ・・・くらいの認識だった。
多少の体格差はあっても安堂猪子があっさり勝つものだと思っていた。
だから見るまでもない、そう思って控え室にいたのだ。

だが・・・・


後輩に連れられ芝城が見たのは土俵に立つアリシアと安堂の姿だった。
安堂の廻しが外れ、行司がそれを直しているのだ。
「はあ、はあ、はあ・・・・・。」 「ハア・・・・ハァ。」
二人とも呼吸を荒くして、戦いの興奮が醒めやらぬ様だった。
「そんなに接戦なのか?そんなに強いのか?あの外人」
まだ一回戦だというのにこの二人の熱気は尋常でなかった。
それに呼応してか、観客も激アツ状態になってしまっている。
やっと安堂の廻しが締め終わったようだ。
本来「廻し待った」のため、止める前の位置、姿勢から始まるのだが
今回は取り直しということになった。

「はっけよい、残った!」

立ち合い、両者とも相手に向かって思いっきりぶつかっていった.

双方ともそれなりに疲れている。立会いで押し負けたら勢いで負ける。
そう考えてのことだ。どちらが当たり負けることもなく、中断する前と
同様に力相撲になっている。またしても長丁場になっていた。

「はあ、はあ、・・・・んんっ!」
「ムッ・・・・クウゥ・・・・・」

安堂の方が押す力があり、アリシアが押し負ける。基本的にアリシアは
腰高な姿勢なので、腰を落として寄って来る安堂に歯が立たない。
安堂が力を込めて押し、それをアリシアが投げようとするが耐える。
逆にアリシアが投げを打つが、安堂が耐え、バランスを崩したアリシアを
押そうとするが、アリシアも腰を落として持ちこたえる。
そして両者動かなくなる。休んでいるのではなく押し合っているのだ。

これの繰り返しだ。

 

動きは止まっているが、両者の疲労はかなり激しいものがあった。
アリシアの金髪が上下左右に波を打つ。
そうしている間にまた安堂の廻しが緩み、勝負は再度中断することになる。
アリシアも安堂猪子も顔が真っ赤だった。息もかなり乱れている。だが
いくら下らなかろうが何だろうが、ここまで意地になったらもう止められない。

「ハァ、ハァハァ・・・・ハア」
「はあ、はあ、はあ、はあ」

振り返りざまに安堂がチラッとアリシアを見る。
そしてアリシアも息を切らせながら安堂を見る。
お互いがこっちを見てると思ってまた振り返る。

二度目の取り直しだ







 |  











 

inserted by FC2 system